空間と時間を同時に見通せるレンズを備えた双眼鏡があるとして、これを銅の発見者に向けてみよう。
すばらしい威力を発揮するこのレンズは、地理的にもまた歴史的にもはるか遠く離れたところに焦点を結ぶでしょう。
その場所は、仮に今から約1万2000年前のイラク北部にあるクルディスタン高地としておこう。
ひとりの石器の道具職人がタ暮れどき、干し上がった川床をうつむきながらゆっくりと歩いています。
獣皮を身体にまとい粗末な革のサンダルをはいて歩を進めながら彼は何かを捜しています。
その腰につり下がっているものは革袋で、中にはすでに様々な大きさの石がいっぱい詰まっています。
なかでも灰色のフリントやチャートは、やがてナイフやスクレーパーやきりなどに仕上げられることでしょう。
しかし、もし彼が首尾よく捜しものに出合っていたなら、こうして足もとを見て歩き続ける必要もないはずです。
しかし、彼には石に対するあくなき関心があり、尽きない好奇心があるから彼は歩き続けているのです。
この川床は彼がこれまで何度も通った場所であるが、そのつど新しい発見がありました。
どのような未知の資源がここに隠されているのか誰にもわからないのです。
まったく偶然でも、石にはよく調べてみる価値があります。
山地の急流に押し流されてきた石は、形も大きさも様々です。
中には焼けたようなオレンジ色をしている部分もあれば、明るい青と光沢のある玉虫色をした斑点状のものもあり、粉々に砕けた輝く細礫を含んだものもあります。
今日ではこうした露出層は、鉄、ロートアイアン、亜鉛、金などの鉱石を含んだ岩石層だと簡単に見分けられるが、わたしたちが仮想する石器時代の道具職人にとっては、それらの石は特に取り引きの対象になるわけでもなかったし、注意もされなかった。